球速向上の議論において、「地面反力」がエネルギーの源だとすれば、リードレッグブロック(Lead Leg Block)はそのエネルギーを球速に変換する装置だと言えます。
助走やステップによって生まれた**並進運動(前方向への移動)**を、前足(踏み込み脚)で止め、回転運動(体幹・骨盤の回旋)へ切り替える。この役割を担うのがリードレッグブロックです。
研究では、球速の高い投手ほど、前足着地後に骨盤回旋速度が急激に上昇することが示されています。その起点となるのが、踏み込み脚による強く・速いブロック動作なのです。
「踏ん張る」の正体──止めることが回すことになる
リードレッグブロックは、単に前足で「耐える」「踏ん張る」動作ではありません。本質は、前進してきた身体を瞬間的に止めることで、運動の向きを変える点にあります。
投球中、身体は本塁方向へ高速で移動しています。このエネルギーをそのまま流してしまえば、上体は前に倒れ、腕だけで投げる形になります。しかし、前足でしっかりとブレーキがかかると、行き場を失ったエネルギーが回旋方向へ逃げる。
これにより、骨盤→体幹→肩→腕という運動連鎖が成立し、末端速度が一気に高まります。
つまり、
止める=回す
という一見矛盾した現象が、リードレッグブロックの本質です。
なぜ球速の高い投手ほどブロックが強いのか
160km/h級の投手に共通して見られるのは、前足着地後の重心の減速が非常に速い点です。前方向への移動速度が一瞬で落ち、その直後に骨盤回旋が最大化します。
この「急減速→即回旋」が成立することで、上半身はムチのようにしなり、ボールに大きなエネルギーが伝わります。
一方で、リードレッグブロックが弱い投手は、
- 前足着地後も身体が流れる
- 膝や股関節が潰れて減速が遅れる
- 骨盤回旋が遅れ、上体が先に開く
といった特徴を示します。この場合、並進運動が回旋運動に変換されずに失われるため、球速は頭打ちになりやすく、肩・肘への負担も増大します。
地面反力との関係──ブロックは「使い方」の問題
リードレッグブロックは、地面反力と切り離して考えることはできません。前足着地時に大きな地面反力を得られても、それを止められなければ意味がないからです。
地面反力が「どれだけ力を受け取れたか」だとすれば、
リードレッグブロックは「その力をどう料理するか」。
- 地面反力:エネルギーの量
- リードレッグブロック:エネルギーの方向転換
この2つが揃って初めて、球速という結果につながります。
技術的ポイント──良いブロックの条件
優れたリードレッグブロックには、いくつかの共通点があります。
- 接地が早く、ブレない
着地が遅れたり、足部が流れると制動が遅れます。 - 膝が過度に潰れない
クッションは必要ですが、沈みすぎると減速が長引きます。 - 股関節で止める意識がある
膝ではなく、股関節で受け止めることで回旋へつなげやすくなります。 - 着地と同時に骨盤が回り始める
止めてから回すのではなく、「止めた瞬間に回る」ことが重要です。
トレーニングへの示唆──筋力よりタイミング
リードレッグブロックを強化するために、単純な脚力トレーニングだけを行っても効果は限定的です。重要なのは、減速と回旋のタイミングを身体に覚えさせること。
低~中強度のステップ動作や、前足着地を意識した回旋ドリルによって、
- 前に流れない着地
- 止めた瞬間に回る感覚
を反復することが、実戦的なブロック能力を高めます。
まとめ──リードレッグブロックは球速の分岐点
リードレッグブロックとは、単なる「踏ん張り」ではなく、運動の方向を変える高度なバイオメカニクス能力です。
前方向へのエネルギーを、回旋エネルギーへ変換できるかどうか。その成否が、球速の伸びしろを決定づけます。
地面反力でエネルギーを生み、リードレッグブロックでそれを回す。
この2つが噛み合ったとき、投球は「力任せ」から「効率的な高速動作」へと進化します。
もし球速が伸び悩んでいるなら、腕や肩を見る前に、**前足が本当に“止めて、回しているか”**を見直す価値は十分にあるでしょう。
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